中鎖塩素化パラフィン(炭素数:14~17)(MCCP)について

切削性向上のため添加されていた切削油の進化もあり塩素系極圧剤は以前ほど使用されなくなっています。しかし加工内容や材料によっては優位に作用するため現在でも使用されています。特にBTA加工やガンドリル加工などの深穴加工や耐熱合金などの難削材では塩素系極圧剤は効果があります。塩素系極圧剤は塩素化油脂(塩化大豆油、塩化なたね油など)、塩素化パラフィンが代表的なものですが切削油の添加剤として多く使用されていたものは塩素化パラフィンと呼ばれるものです。塩素化油脂は反応が早く効果的でしたが錆の問題が出やすく広く使用されませんでした。従って塩素化パラフィンが広く使用されるようになります。

塩素化パラフィンは素材メーカーの副産物から製造されるものであり安価で大量に供給できるといったメリットもあり切削油の添加剤のほかに難燃剤、ポリ塩化ビニル用可塑剤としても広く普及しています。

切削油の極圧剤として塩素化パラフィンは炭素数が短いと反応性が早い(加工性が良い)=分解が早い(錆が出やすい)、炭素数長いと反応性が遅い(加工性が悪い)=分解が遅い(錆が出にくい)という傾向にあります。そのため炭素数10から13の短鎖塩素化パラフィン(SCCPs)よりも中鎖塩素化パラフィン(炭素数:14~17)(MCCP)は錆の問題が比較的少なくまた反応性も確保できるため塩素系極圧剤の定番となっていました。こういった背景から中鎖塩素化パラフィンは安価で高性能の切削油ができるため中小企業だけでなく大企業にも塩素含有の切削油が大量に使用され高度成長時代のものづくりを支えてきました。

しかし近年では環境への影響や廃油処理時の困難から切削油の塩素フリー化が叫ばれ、また塩素フリー塩素系極圧剤の代替としての新たな極圧剤の開発や複数の極圧剤のコンビネーションにより塩素フリー切削油が開発されある程度切削油の塩素フリー化が進みました。従って現在でも塩素系極圧剤含有の切削油を使用している加工の多くはハードルの高い分野と考えられます。

その中、令和4年1月の残留性有機汚染物質を国際的に規制するストックホルム条約による規制対象物質について検討を行う「残留性有機汚染物質検討委員会」で中鎖塩素化パラフィン(炭素数14で塩素化率45重量%以上のもの)がリスクプロファイル案を作成する段階に進めることが決定されました。中鎖塩素化パラフィン(MCCP)は日本を含む各加盟国で2024年~2025年に規制となる見通しです。

弊社でも中鎖塩素化パラフィン(MCCP)の調査依頼が急増しています。また含有している他社製品からの代替製品の引き合いが増えてきています。現在、BTA加工、引抜油、圧造油、水溶性ミスト切削油などを試験中です。お客様の現在の油剤のサンプルを頂いて試験し個々のお客様ごとの使用条件に合わせて開発しています。中鎖塩素化パラフィン(MCCP)の代替を検討中であればご連絡いただければ幸いです。

塩素フリー水溶性切削油極圧試験

塩素フリー水溶切削油チムケン極圧試験 47kgf