米国ハングスターファー社製金属加工油の独自性と適用効果

米国ハングスターファー社(hangsterfar’s Laboratories,inc.)は、創業1937年ニュージャージー州の金属加工用油剤の老舗専門メーカーである。1942年に世界で初めてステンレス鋼の引抜油を完成させ米国でのステンレス鋼の成型技術の著しい発展に貢献したメーカーである。また水溶性切削油の分野においても同社の技術が欧米の油剤メーカーに波及していった経緯がある。

現在ではボーイング、エアバス、ロールス・ロイス、プラット・アンド・ホイットニーなど多くの航空機・エンジンメーカーの承認取得し、高精度加工分野において難加工材 × 高精度加工向けのトップクラス油剤メーカーとして高い評価を受けている企業である。日本に初めて導入されたのは昭和28年と歴史は古い。当時日本の金属加工の現場では水溶性切削油はまだ導入されていない時代で水溶性切削油のオリジナル製品であるS-500は日本の切削加工技術を大きく向上させた。従って現在も発売しているS-500は日本での水溶性切削油のフロンティアと言える。

 

 

代表的な製品

1ハングスターファーS-500CF

ハングスターファーS-500CFは塩素フリー型エマルションタイプの切削油でオリジナル製品のS-500のアミンフリー、殺菌剤フリーであるという基本的な特徴は変更せず、塩素フリー製品としてそのままバージョンアップし続けている製品である。いわゆる静菌型といわれる製品でこのようなタイプの製品は日本だけでなく世界でも少ない。

鋼・ステンレス・アルミ・チタン・ニッケル合金からアルミ、銅合金まで対応し1油種で工場統一できる。従って汎用品でありながら難削材にも適用可能である。

銅合金は絶対変色しない、塗装やゴム、樹脂への影響が少ない、皮膚障害の問題は解決できるということがメリットである。これらの問題を解決できるS-500CFはアミンフリー、殺菌剤フリーという基本姿勢が特徴の製品であると言える。

静菌型のS-500CFは殺菌剤を使用していないためバクテリアはある程度発生するが管理をしっかり実施すれば悪臭を発生するまで増殖しない。実際、弊社のユーザーでも10年以上無交換であった事例もある。一方現在、主流の殺菌剤添加の抗菌型の水溶性切削油はバクテリアが発生しにくいが殺菌剤が消耗し定期的な補給がなければバクテリアは一気に増殖する。

アミンフリー、殺菌剤フリー製品は本当に人体に影響が少ない製品であり、環境負荷の大きい製品が大きい中、稀有な存在でありもっと評価してもよいのではないかと考える。特に化学物質の安全基準が厳しくなり少し過剰ともいえるコンプライアンス重視の時代になってきているように見える現在では特に見直されるべきと思う。

またS-500CFは航空機産業においても世界の大手エンジンメーカー、機体メーカーの認証もあり古くから採用されており、日本国内においても広く使用され実績も多い。

ハングスターファーS-500の実例

① S-500シリーズの皮膚炎に関するアメリカでの臨床報告

スイスのバーゼル皮膚科診療大学の報告では人体の皮膚に炎症を起こされる恐れはないとの報告結果がある。S-500シリーズを使用している企業46社の総計20000人が毎日接触しているが、少なくとも健康者の皮膚には何の障害も与えるのもではないと証明されている。

 

② 重機部品の量産工場の実例

被削材 : SCM435

比較油剤:国内メーカーシンティクタイプ

使用状況:定期的な補給をしながら3%以下の低濃度で使用している。以前シンセティックタイプをテストした際にカビ類の繁殖、錆びの発生から機械の損傷等で大幅な損害が出てしまったがS-500CFに戻したところ機械の損傷はなくなった。1年に1回程度の入替をしているが油剤単価は高いが油剤ランニングコストは大幅にダウンしている。

2ハングスターファーS-787

ハングスタファーS-787はセミシンセティックタイプの切削油で被削材は選ばずマルチメタル対応できる。ホウ素、ホウ酸 塩素、塩素化パラフィン ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドの凝縮物 第二級アミン 硫黄化合物 揮発性有機化合物VOCの規制物質は含有しない。

ハングスターファーS787が高性能である理由の一つ目に均整のとれた油滴分布があげられる。エマルションの油滴分布がエマルション全体で同じサイズの0.5μで均整がとれており、工具と接触している間、接触面に同じ油膜強度を提供できる。

二つ目にブロックコポリマーがあげられる。この成分は熱に反応する逆溶解性を持っており。液が熱や温度の閾値に達すると、ブロックコポリマーが液体から固体に推移する。この固体被膜は特定の熱領域において潤滑性を発揮する。

三つ目に高い濡れ性があげられる。冷却にも潤滑にも効果的な濡れ性が必要である。良く濡れる液体は濡らす表面との接触角が小さく、いわゆる表面張力が低い液体である。適正な濡れによって液は最も必要とされる切り屑と工具の間、又は砥石と加工物の問に入り込むことができ多く熱を放出でき、多くの潤滑成分を運ぶことができる。

 

 

次に世界的に航空機用として実績のある切削油と比較したでチタンのタッピングトルク試験の結果を示す。他社と比較して圧倒的に低い結果となっている。

 

ハングスターファーS-787の実例

① 広島県呉市エンジンメーカーでの実績

被削材 :6.4チタン ,アルミ7000系     

従来油剤:H社エマルション

使用状況:穴あけ、エンドミルの加工が切削速度5倍実現。

加工熱による油分蒸発が少なく原液補給量1/3に減少になった。

 

② 小惑星探査機プロジェクトメンバーでの評価

被削材 :インコネル718     

従来油剤:国内メーカー油性タイプ(塩素フリータイプ)

使用状況:マシニング加工で不水溶性と同条件で加工出来た事を評価。

これまで水溶性化を試みるが、同条件に耐えられるクーラントはなかった。

以上のようにハングスターファー製品の歴史は古く切削油のビンテージ的な存在だけでなく、人体や材料、機械要素の影響の少ない特徴を維持しながら常に性能はアップデートしている信頼性の高いメーカーである。また単なる油剤メーカーではなく、加工現場の課題を化学の力で解決する「研究所」としてのアイデンティティを現在も大切にしているメーカーである。