ホルムズ海峡危機と現在のグループⅢベースオイル供給不足について
日本ではガソリンや軽油をはじめとする市民生活に直結する石油製品は現在では特に問題なく供給され平穏保っていますが、ホルムズ海峡の危機は変わっていません。工業用潤滑油も高値になっていますが、問題なく供給されるようになっています。しか潤滑油基油の一部は深刻な供給不足になっています。それはグループⅢと呼ばれる精製度の高い基油です。グループⅢ基油は、一般に高い粘度指数と優れた低温特性・酸化安定性を備えた高精製ベースオイルです。最近の合成油呼ばれる自動車用エンジンオイルや省エネ、高引火点型潤滑油などで広く使用されるようになって需要は拡大しています。切削油においても低粘度かつ高引火点の優位性の特徴を生かし、弊社でも古くから使用していました。今後も自動車用だけでなく工業用でも優れた性能から需要は増えいくと考えられていました。しかし元々精製度の高さから新しい製造設備の工場でしか製造できないため、供給されるメーカーは世界でも数社と少なく、韓国とカタールのメーカーが世界のほとんどのシェアを持っています。したがって日本の大手元売や精製会社の設備では古すぎてグループⅢの要求性能は満たされず、グループⅢ基油はすべて輸入されています。このような状況の中、日本の工業用潤滑油の分野でも指定可燃物の油圧作動油や摺動面油がこの基油で新しい製品ラインナップが開発されてきました。今回はグループⅢ基油のこれからの推移を考えてみます。
以前のコラム「最新の潤滑油の高品質ベースオイルについて」
1極端な供給不足の原因と現状
今回のグループⅢベースオイルの価格上昇は、原油価格や海上運賃の上昇だけでは説明できず、紛争による攻撃でカタールShellのPearl GTL設備の損傷による供給能力の減少が、需給を大きく引き締めていると考えられます。
特に重要なのは、2026年6月時点で国際相場指標のICISが、グループⅢの供給回復には長期間を要し、年間供給量が約150万トン減少する可能性があると指摘していたことです。Reutersが2026年10月8日に報じた内容では、ShellはPearl GTLの一部運転を再開しています。ただし、損傷した2系列のうち1系列は修理中で、復旧完了は2027年第1四半期の見込みです。部分再開は供給正常化を意味しません。全面復旧の時期が先で、供給正常化の時期はさらに不透明という意味では妥当です。ただし、現時点では部分再開という進展があります。
供給についてはは、世界の7割を占めるシェアのある韓国の大手供給メーカーなどからの供給増加だけでは不足分を補い切れていません。需要側では、低粘度エンジンオイル向けなど、特定の品質・規格を満たすベースオイルへの大きな需要が残っています。
その結果、単に価格が上がるだけでなく、売り手がスポット販売を控えたり、契約数量を制限したりする状況が生じています。
今回の価格上昇の本質は、原油高というよりも、特定品質のグループⅢベースオイルの供給不足と代替調達の限界です。 原油価格が下がっても、供給能力が回復しなければグループⅢ価格が同じように下がるとは限りません。ICISの6月時点の分析では、供給正常化には6〜9か月程度かかるとされていました。一方、9月末のInfineumによるICIS分析の紹介では、供給不安は2027年まで続く可能性が示されています。さらにShellのPearl GTLは部分再開したものの、損傷設備の修理は2027年第1四半期の見込みです。これらを踏まえると、今後数か月で大幅に値下がりするより、高値圏で推移し、2027年に入ってから徐々に緩むという予想と考えます。結論として、2027年に入ってから徐々に価格が下がる可能性を基本線としますが、今後も基本的に高値相場が続くと考えられます。また紛争は解決の目途は立っていないことから状況によってはさらに高値と供給制約が残ると考えられます。

