金属洗浄剤について

金属洗浄剤は、切削加工後の金属表面の洗浄やグリース、錆、スケール、その他の汚染物質を除去するために広く使用されます。適切な洗浄剤を選択することは、洗浄する金属の種類、汚れの性質、および環境への影響を考慮する必要があります。主な金属洗浄剤の種類を以下に紹介します。

1.水溶性洗浄剤

①アルカリ性洗浄剤

  • 特徴: pH値が高く、油脂、軽度の錆、その他の有機汚れを効果的に除去し、一時的な防錆効果があります。
  • 用途: 自動車部品、エンジン部品、その他の油脂が多い工業部品の洗浄。
  • 注意点: アルカリに敏感な金属(アルミニウムや亜鉛など)には使用不適合な場合がある。更新頻度が多くなり廃水の処理コストが多くなります。最近では洗浄液を添加しない純水を電気分解したpHが11~13のアルカリ電解水も注目されています。

②. 酸性洗浄剤

  • 特徴: 酸性のため、酸化物、スケール、錆を効果的に除去します。
  • 用途: 水垢や錆の除去、金属の表面処理前の下地作り。
  • 注意点: 直ぐに処置しないと金属の腐食を引き起こす可能性があるため、使用後は十分に洗浄して中和する必要があります。

③中性洗浄剤

  • 特徴: 中性のため、非鉄への影響が少ない。
  • 用途: 非鉄の軽度汚染の洗浄。
  • 注意点: 防錆力が弱いので直ぐに処置しないと鉄系金属が錆びを引き起こすので基本的に鉄系金属には使用はできません。中性タイプでも廃液は産業廃棄物として処理する必要があります。

2. 炭化水素系洗浄剤

  • 特徴: 鉱物由来の溶剤、合成油の炭化水素溶剤で揮発性有機化合物(VOC)を含むことが多く、非常に効果的にグリースや油を溶解します。
  • 用途: 電子部品、精密機械部品の洗浄。
  • 注意点: 第2,第3石油類の製品が多く引火点がある危険物に該当するため保管数量や設備に制約が出てきます。また揮発性が高いため、使用環境において火災や健康へのリスクを考慮する必要があります。引火点が高い製品ほど危険性が少なくなるが乾燥時間が遅くなりタクトタイムが長くなります。基本的に油分を含まない水溶性の汚れは落ちません。

3. 塩素系洗浄剤

  • 特徴: メチレンクロライド、トリクロールエチレン等の有機有機溶剤で無色で甘い香りが特徴的です。この化合物は非常に揮発性が高く、油分を溶解する能力は最高です。危険物に該当せず乾燥時間も短くて金属洗浄用途では非常に性能が高く安価で広く使用されていましたが、健康へのリスクや管理濃度の制約、PRTR法の第一種指定該当に該当していることからも代替えが進んでいます。しかしヘビーな加工油が必要なステンレス引抜加工やプレス加工など塩素系溶剤でしか難しい分野もあります。
  • 用途: 引抜加工、プレス加工のヘビーな油性加工油の洗浄。
  • 注意点:強力な揮発性と有毒性のため、適切な換気と個人保護具(手袋、マスク、保護眼鏡など)を使用して取り扱う必要があります。閉じた空間での使用は避け、常に安全データシート(SDS)の指示に従ってください。塩素系洗浄剤の使用には、その効果とリスクを十分に理解し、適切な安全対策を講じることが重要です。特に、発がん性のリスクや健康への潜在的な危険性については、注意が必要です。基本的に油分を含まない水溶性の汚れは落ちません。

4. 準水系洗浄剤

  • 特徴:水溶性系洗浄剤と溶剤系洗浄剤の準水系洗浄剤はその中間にあたる洗浄剤です。水溶性の溶剤(アルコール系・グリコールエーテル系・ピロリドン系など)が主成分になっています。大気汚染を起こすこともないため環境にも優しい洗浄剤で消防法に沿うため多く環境規制が厳しい地域や業界での使用されています。
  • 用途: 電子産業の電子基板や精密部品の洗浄使用され、水濡れが問題となる部分に対して効果的です。自動車産業でもエンジン部品や機械部品の洗浄に用いられています。
  • 注意点: 洗浄力や乾燥性がその他の洗浄剤に比べて劣る場合があります。

金属洗浄剤を選ぶ際には、対象となる金属の材質、汚れの種類、作業環境、廃棄物の処理方法など、多くの要因を考慮する必要があります。基本的には水溶性の汚れの除去には水溶性洗浄剤、油性の汚れには炭化水素系はたは塩素系洗浄剤が有効です。アルカリ洗浄剤でも油性の汚れも対応できますが粘性の高いヘビーな汚れは不得意です。またよく誤解があることですが塩素系溶剤は万能でどんなものでもよく落ちると考えられていますが基本的にイオンデポジットのような水溶性の汚れは落ちません。以前から塩素系溶剤からの代替えが進みより環境や人体に影響が少ない製品へとシフトされてきていますが洗浄液単体の性能では劣ります。従って洗浄機も見直し、より効率的に落とせる仕組みを考慮必要です。最近では減圧、真空環境で洗浄する洗浄機が多く採用されています。このような設備は高価で大型化しますが塩素系洗浄剤と比較して劣る洗浄力、乾燥時間をカバーするために導入されています。そして安全で効果的な使用のためには、製品の安全データシート(SDS)を確認し、推奨される使用方法と安全対策を守ることが重要です。弊社でも洗浄剤や洗浄機のご相談を承ります。ご相談ください。

 

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