ミスト加工油について
ミスト加工用切削油(MQL:Minimum Quantity Lubrication)について、わかりやすくまとめます。
従来の「洪水加工(大量のクーラント)」と違い、ごく少量の切削油をミスト(霧状)にして工具先端へ吹き付ける方式です。
1ミスト加工の目的
①潤滑を確保しつつ
②冷却や切りくず排出を助け
③使用油量を大幅に削減することが挙げられます。
2ミスト加工用切削油の種類
① 植物油系(エステル系)
潤滑性が高い(焼き付き防止◎)
蒸発しにくく、においも比較的少ない。
一般鉄系材料だけでなくアルミや銅合金にも適応加工で、現在の主流になっています。
② 鉱物油系
コスト低め
ミスト中の臭いやミスト曝露が課題
③ 水溶性タイプ
低粘度で霧化しやすい
清浄性が高い(ベタつき少ない)
大量に噴霧すれば冷却効果は望めるが、潤滑性が不足する場合あります。
3ミスト加工のメリット
①油使用量 90~99%削減②
②廃液・洗浄コスト低減、環境負荷が小さい。
③ ワークがほぼ乾いて仕上がりが清潔
4デメリット/注意点
① 冷却力は洪水加工より弱い → 高温化しやすい
②条件づくりが重要(送り・回転・油量・噴射方向)
③ミスト曝露(呼吸器・皮膚)への配慮が必須→ 局所排気・密閉・防護具など考慮が必要になります。特に極圧剤配合のものは人体や環境への配慮する必要があります。
④材料や加工によっては不向き(重切削、深穴など)
5 選定のポイント
加工対象
アルミ・銅合金:植物油系(極圧剤非含有)
ステンレス・難削材:エステル+極圧剤添加タイプ
粘度について
低すぎる:潤滑不足
高すぎる:霧化しにくい/べたつく
→ 一般に 10〜40 mm²/s(40℃) が目安
加工内容
高速切削・ドリル・タップ → 潤滑性重視
フライス・仕上げ → 霧化性と清浄性も重視
6 安全・設備面について
①局所排気・囲い込み
②マスク(P2/P3相当)・保護手袋
③オイルミストコレクタ(フィルタの定期交換)
④火気管理(ミストは着火しやすい場合あり)
7 こんな場合はミスト加工が向いています。
アルミ部品の量産切削
切断加工
工場のクーラント管理コストを下げたい。
加工後の洗浄工程を減らしたい。
8 水溶性切削油と併用の注意
最近では専用機だけでなく、マシニングセンタの付属オプションにしてミスト給油機が搭載している機種があります。マシニングセンタの主な切削には水溶性切削油を使用し、ピンポイントでミスト加工油を使用する場合、ミスト切削油がクーラントタンク内に混入してしまいます。前述のとおり、ミスト切削油は少量で潤滑性を確保するために植物油由来の原料を使用することが多いため、水分と合わさった植物油が加水分解し水溶性切削油の腐敗の原因になることが予見されます。水溶性切削油とミスト切削油を併用する際には水溶性切削油の管理を強化する必用があると考えます。

