油性切削油による銅の変色について

鉄、ステンレス用の油性切削油で切削加工すると銅合金は黒く変色してしまうことがあります。これは切削油に添加されている硫黄系極圧添加剤による影響です。硫黄系極圧添加剤は加工性を向上させるために添加されています。この作用は簡単にいうと切削加工熱で硫黄が材料表面をやわらかい硫化化合物に変化させその面を切削するというものです。

鉄系材料や特にステンレス材には特に有効で面粗度が向上させ加工精度に大きく寄与します。弊社でも切削油の性能試験を実施しても硫黄系極圧剤が添加されていると性能の差が確認できます。添加剤の反応度合や量で変わりますが少量でも効果があります。鉄系材料やステンレス材にはメリットは大きいのですが銅系材料では腐食して黒く変色してしまいます。

また加工方法でも硫黄の作用が強すぎてハイス工具も化学摩耗することもあります。このため硫黄の反応の目安としてJISの中で油性切削油の銅版腐食試験があります。試験条件は100℃×1hの浸漬です。この試験では変色の度合いによって1a~4cまで12段階あります。

1 わずかに変色
    a. 薄いだいだい色 (磨きたての銅板とほとんど同じ色)
    b. 濃いだいだい色
2 中程度に変色
    a. ピンク色
    b. 紫色がかった薄いピンク色
    c. だいだい色の上に濃いピンク色,紫色がかった青色などの多色模様
    d. 薄い金色がかった銀色
    e. 黄銅色又は金色
3 濃く変色
    a. 黄銅色の上に赤茶色の模様
    b. 赤と緑を伴った多色模様(くじゃく模様)
4 腐食
    a. 生地が見える程度の緑がかった青紫色又は黒色
    b. 黒鉛ようの黒色又は光沢のない黒色
    c. 光沢のある黒色

4cのタイプでは特に硫黄の反応が高く加工性は良好な反面銅合金に影響があります。活性度1のタイプの中では硫黄が無添加のものや不活性の硫黄添加剤を含有している製品もあります。不活性タイプの硫黄添加剤は元々反応がマイルドなものやある程度反応はするけれど銅用変色防止剤を添加しているものもあります。銅用変色防止剤を添加している製品は劣化や消耗することもあり変色防止剤が消耗すると活性度が上がり銅合金が変色してしまう場合があり注意が必要です。銅合金を主体で加工する機械であれば硫黄系極圧剤は無添加の方が望ましいと考えます。BTAやガンドリルような深穴加工機では一般的に重切削のため活性度4cの切削油を使用されていますが銅合金の加工される場合はすぐに黒く変色してしまいますので現在の使用油を確認すること必要です。また工作機械によっては銅合金が多く使われており影響がある場合は不活性タイプの方が無難です。しかし加工性を重視するなら活性タイプの方が圧倒的に有利です。銅の変色についてお困りであれば相談ください。