最近の切削油の添加剤事情
切削油には用途別、性能向上、液寿命などの目的のため非常に多くの添加剤が配合されています。添加剤のほとんどは添加剤専門メーカーの製品で日本国内の添加剤メーカーは少なく、多くは欧米からの輸入品になっています。これは切削油の技術の進歩が欧米から始まってことだと考えられます。そして段々とニッチな市場ということもあり添加剤専門メーカーが再編されプレーヤーが減ってきていました。こういう市場で数年前からのコロナ禍から輸入品の入手が困難な状況となり現在でもその傾向が続いています。特にコロナ禍の頃はコンテナ不足、植物油の輸出制限、金属石鹸原料不足による供給制限、他国の買い占めに加えストライキや寒波によるに港の閉鎖など非常に多くの困難が続き日本の資源や資金力のなさを痛感しました。
それに加えて原料工場の火事や事故で入手困難になったことが多くありました。ギヤオイルの添加剤が輸入困難になり国内のギヤオイルの工業用、自動車用ともギヤオイルのすべてが不足になったことが記憶に新しいですが、この時には一年以上ギヤオイルが入手できなくなっていました。またブライトストックと呼ばれる高粘度の基油の供給が数か月止まり高粘度潤滑油が制限になったりしました。2,023年8月現在では日本国内の大手硫黄系添加剤メーカーの火災でこのメーカーの添加剤と使用している摺動面油がストップしています。これによって石油元売りの製品の多くが10月中旬からの生産開始予定となっています。
コストについても原油相場連動のベースオイルと異なりプレイヤーが少ないとこと、高付加価値製品ということもあって右肩上りの上昇をしています。そんな中、韓国、中国、台湾、タイ、マレーシア、インドなどアジア製の原料が入りだしています。すべてとはいえませんが10年前に比べると欧米製のものと比較してもかなり品質が向上し遜色ないように思えます。また入手性も欧米製のリードタイムより短いものメリットになります。これからアジアのファインケミカル企業からの原料も増えていくように考えます。
できれば安定供給のためにも日本企業のメイドインジャパンがベターと考えますが、添加剤の原料も輸入品であることもあり日本企業が必ずしも安全とは限りません。また新しいアジアのファインケミカル企業は大規模な製造ロットなためコスト的には日本製のものは不利な部分もあると考えます。やはりメイドインジャパンとはどの分野でもより高性能なものを追求していかなくてはならないと思います。そして原料だけでなく切削油製品も欧米製輸入品以上に高性能かつ持続的社会を考慮した製品となり、今後発展し続けるアジア市場に展開出来れば理想です。