切削油について工作機械メーカーからの質問 油性切削油編
工作機械メーカーから切削油について疑問に思うことの質問の続きです。今回は油性切削油についての質問に回答したいと思います。
① 長く使用している切削油の状態が良いか悪いかを確認する方法はありますか?
新油と使用油の粘度や酸価の比較で劣化状態かどうか推定できます。
② 摺動面油やグリスと混ざった切削油を分離して再利用できる方法はありますか?
難しいと思います。
③ 絶対に燃えない切削油はありますか?
絶対に燃えない油性切削油はありません。水分を10~15%含んだ含水タイプものはありますが濃度管理が困難で普及していません。
④ 絶対に加工熱による煙が発生しない切削油はありますか。
絶対に加工熱による煙が発生しない切削油はありません。引火点の高いものほど煙が発生しにくい傾向です。
⑤ 加工熱による煙の発生量は切削油によって変わるものでしょうか?
もちろん加工熱による煙の発生量は変わります。加工熱は高いほど煙の発生は多くなります。煙といっても熱によって焼けているヒュームと呼ばれるものと切削油が霧状になっているミストは違います。
⑥ 加工時に発生するミスト量は油メーカと種類により変わるものでしょうか? ミストが多く健康に悪そうなユーザーを見かけたことがあるので粘度について詳しく知りたい。
ベースオイルの軽い留分が多いとミストは多くなります。軽い留分が少ないと粘度が高くなる傾向になりますが、最近では高品質なベースオイルを使用し低粘度でも臭気もミストも低く抑えられた製品の開発がされています。添加剤もアンチミスト剤といわれる添加剤を配合している製品もあります。
⑦ 粘度ですが「20」となっていても機械運転時には「5」とかに下がったりしますが切削油メーカ-としてどのように加工に応じて粘度をお勧めするものでしょうか?
過去のデータや実績によることが多いです。粘度は40℃での数値を表示していることが多いのですが、この粘度が高いと油膜強度が高くなる半面、刃先に到達しにくく、冷却効果も悪くなりやすいです。また切り屑排出も悪くなり、油剤の持ち出しも多くなります。例えば深穴加工などでは低粘度かつ高潤滑を求められますので10~15cst程度が理想とされています。一般的なフライス加工やホブ加工では油膜が厚いほど有利とされ30cst程度が理想とされています。最近では高引火点の油剤が注目さており深穴加工でも20cst程度の製品を使用することも増えています。
⑧ 添加剤の特長(長所・短所)使用時に注意する点を聞きたい。
添加剤も広範囲の分野がありますが油性切削油では潤滑性向上の目的の添加剤が中心となります。それぞれの長所・短所は別紙の通りです。
リンク参照 切削油の極圧剤とその作用について 油性切削油編
⑨ 床に落ちた油や機械廻りについた油が少しずつでも乾燥してなくなる切削液はありますか? 工場の中がべたべたになるユーザーが多いので
ないです。油性切削油は機械回りが汚れやすいですが水溶性切削油でも水分が蒸発後はべたべた度合が少ないですがやはり残ります。またシンセティックタイプでは汚れは低減できますが、水分が蒸発後はもっと固い樹脂被膜なり始末が悪いケースもあります。