ハングスターファー製品について

非常に古い切削油の加工資料があったのでコラムとします。下記画像のリンク資料は昭和33年の大手自動車メーカーでの加工試験の資料です。昭和30年代といえばこれから日本が高度成長の時代へと入っていく頃です。この昭和33年は聖徳太子の一万円札が登場し大卒の初任給1万3467円、東京タワー、チキンラーメン、ホンダスーパーカブが登場し平均寿命は男性65歳、女性69.6歳であり厚生省が「栄養白書」の中で日本人の4人に1人が栄養不足であると発表した年とのことです。

このような時代であり日本の金属加工の分野では水溶性切削油はまだ導入されておらず輸入品である米国ハングスターファー製品のS-500は水溶性切削油のフロンティアであったと聞いています。円安だといわれる2024年3月時点での為替相場が1ドル150円ですが当時は固定相場であり1ドル360円でした。このため非常に高価であったにも関わらず米国ハングスターファー製品は飛ぶように売れたと先代から聞きていました。資料では油性切削油の単価が67円/L、ハングスターファーS-500は453円/Lと記載されています。

現在でもハングスターファーS-500は今も現役製品で航空機産業をはじめあらゆる分野で使用されています。発泡しやすいなどもちろん欠点はありますが時は経ても基本的な特徴は変更せずそのままバージョンアップし続けています。基本的な特徴とはアミンフリー、殺菌剤フリーであるということです。いわゆる静菌型といわれる製品でこのようなタイプの製品は日本製品だけでなく世界でも少ないのではないかと思います。従って銅合金は絶対変色しない、塗装やゴム、樹脂への影響が少ない、皮膚障害の問題は解決できるということがメリットがあります。また静菌型の水溶性切削油は殺菌剤を使用していないためバクテリアはある程度発生しますが管理をしっかり実施すれば悪臭を発生するまでは増殖しないとういう特徴があります。実際、弊社のユーザーでも10年以上無交換であった事例もあります。一方現在、主流の殺菌剤添加の抗菌型の水溶性切削油はバクテリアは発生しにくいですが殺菌剤が消耗し定期的な補給がなければバクテリアは一気に増殖します。

アミンフリー、殺菌剤フリー製品は本当に人体に影響が少ない製品であり環境負荷の大きい製品が大きい中、稀有な存在でありもっと評価してもよいのではないかと考えます。特に化学物質の安全基準が厳しくなり少し過剰ともいえるコンプライアンス重視の時代になってきているように見える現在では特に見直されるべきかと思います。

※下記画像のリンクは昭和33年の加工データです。
やはり65年前の機械及び加工条件のため現在とかなり違い逆に興味深いです。